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東武 伊香保線
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 東武伊香保線は渋川駅前‐伊香保間12.6kmの軌道で,1910年10月16日に伊香保電気軌道として開業しました。伊香保線より前に上毛馬車鉄道として前橋駅前‐渋川駅前間の前橋線14.5km,および群馬馬車鉄道として高崎駅前‐渋川新町間の高崎線20.9kmが開業しています。前橋線と高崎線の軌間はそれぞれ762mm,576mmでしたが1910年の電化と同時に1067mmに改軌され,伊香保線は開業当時から直流600V(当初550V)電化,1067mmで敷設され全線単線となっていました。伊香保線の所有者は1913年から高崎水力電気,1921年から東京電燈に移り,1927年からは東武鉄道となりました。伊香保線は起点渋川の標高173mに対し伊香保は697mの高地にあり,平均勾配41.8‰,最急勾配57.1‰という山岳路線で,安全側線を兼ねたスイッチバック式の退避設備や多数の急カーブにより登り降りし,渋川新町から伊香保まで45分を要していました。戦後になり最新式の車両を投入し路線を拡充したバスに対し,車両,輸送力,所要時間の面で見劣りしてきたため1956年12月29日に廃止されました。伊香保温泉 峠の公園にデハ27が保存されています。
■車両 (伊香保線 1956年時点)
種別 車両番号 製造年 主な仕様
電動客車
デハ
2 11 13 15 17 21 23 27 28 30 31 33 34 1910‐1926 木造2軸単車,シングルルーフ,トロリーポール,急勾配での非常用制動手段として主電動機で発電した電力を台車中央の電磁石に通電,発生磁力で鋳鉄製ブレーキシューをレールに吸着する電磁吸着ブレーキ装備,落成当初はオープンデッキ,車体側面腰板部絞り込み無し,後年車体更新時に運転台左右入口外側に吊り下げ式引き戸取付
デハ27
No.D850_250503‐046
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園
この車両はもともと利根発電の9号として誕生し東京電燈移行時に27号と改番,さらに東武鉄道に移ってデハ27となりました。廃線後は車体のみ渋川市の個人宅で50年以上大切に保存されていましたが2013年11月に渋川市に寄贈されました。台車は豊橋市の個人が保存されていた豊橋鉄道モハ301号のブリル21E台車を寄贈して貰い,組み合わせて復元し峠の公園に展示されました。
No.D850_250503‐045
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園
峠の公園は2013年に伊香保温泉再生事業の一環として整備されたもので,手前の線路付近に当時の軌道があり,当時の終点伊香保駅は200mほど西方の榛名登山口バス停近くにあったようです。
No.D850_250503‐052
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園
欅材を用いた木造車体は長さ約8.08m,幅1.98m,高さ3.15mで落成時は運転台前面窓付きオープンデッキ仕様でしたが,後年,車体締替と称する更新工事で吊り下げ式の引戸を取付けています。
No.D850_250503‐053
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園



運転台下には大形の救助網がありますがこれは取り外し式で,折り返し時に反対側に取り付けたそうです。また前照灯も取り外し式で夜間のみ運転台正面中央に取り付けたとのこと。
No.D850_250503‐055
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園



正面。渋川行の看板を付けています。
No.D850_250503‐059
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園



取り外し式の防護網
No.D850_250503‐060
2025年5月3日
東武 デハ27
伊香保 峠の公園
道路脇にRAILROAD CROSSING標識が建てられています。覆い屋根には1915年に建てられた京都駅ホームと同様な軒飾りがあります。

 2025年5月5日 ページ作成開始
 2025年5月8日 ページ新設


■参考文献
 Wikipedia 東武伊香保軌道線
 渋川市観光情報 伊香保電気軌道(保存展示の概要)パンフレット
  https://www.city.shibukawa.lg.jp/manage/contents/upload/5f6d3614450fa.zip
 今尾恵介監修 日本鉄道旅行地図帳3号 関東1 新潮社 2008年7月18日発行


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