EF58
EF58 TOP 1-60 61 62-99 100-125 126-149 150-175

 EF58は戦後経済復興の文字通りの牽引機として敗戦間もない1945(昭和20)年10月から設計開始,翌年から製造された旅客用直流機で,貨物用のEF15形と共通設計されました。軸配置は2C+C2で,主台車の台枠はEF15と共通構造です。主電動機は出力275kWのMT41,歯車比は28:75=1:2.68,ちなみにEF15は20:83=1:4.15です。当初,新製されたEF58はデッキ付の箱型車体で,列車暖房装置や高速度遮断器も未搭載,パンタグラフは電車用のPS13という未完成な状態でしたが,その後,装備改造が行なわれ,高速度遮断器の取り付けや空気上昇式PS14パンタグラフへの交換が実施されました。しかし,1949(昭和24年)にインフレ抑止策としてGHQから出されたドッジ・ラインにより箱型EF58の製造は1-31号機まででストップしてしまいました。このとき見込み生産で落成間近となっていたEF5832-34の3両が貨物機に設計変更され,EF18として誕生しています。

 その後,1952(昭和27)年の高崎線電化に伴い,高崎・上越線用としてようやくEF58の増備が決まりました。暖房用の蒸気発生装置(SG)を搭載するため,車体と台枠を延長してスペースを確保することになり,今に見られる流線形のEF58が誕生しました。流線形の一番機は35号機で,1952(昭和27)年3月に製造されています。この35号機と36号機は箱形車体の形態を受け継ぎ,車体側面の機械室窓が7個並んでおり,37号機以降の5つ窓と形態の違いが見られます。
 流線形EF58の増備と並行して,箱型車体で誕生した1-31号機の改造が1953(昭和28)年から1957(昭和32)年に実施され,流線形の車体に載せ換えられています。なお,発生した箱型車体は当時凸型車体であったEF13に譲られました。
 EF58は,1953(昭和28)年の名古屋電化に伴い,東京-名古屋間で特急「つばめ」「はと」を含む主要列車を牽引しました。1956(昭和31)年には東海道本線全線電化が実現し,東京・宮原両区の24両が淡緑3号と黄1号の青大将塗色となって特急牽引に活躍しました。
 また,EF58は,1956(昭和31)年に誕生した夜行特急ブルートレイン「あさかぜ」の先頭も務めています。1958(昭和33)年には「あさかぜ」向けに20系固定編成客車が登場,20系の牽引機も電化区間はもちろんEF58でした。その後,1958(昭和33)年4月10日の姫路電化,1959(昭和34)年9月22日上郡電化,1960(昭和35)年10月1日倉敷電化,1961(昭和36)年10月1日三原電化,1962(昭和37)年6月10日広島電化,と電化区間の延伸とともに西へ西へと活動範囲を広げていきました。

 1960(昭和35)年10月1日からは東京・宮原区の20両に対し,20系用の新型電源車カニ22の制御装置と連絡電話の取り付けを行ない,塗色を青15号とクリーム1号のブルートレイン塗色とされました。東京-九州間のブルトレに関しては,1963(昭和38)年12月20日に20系が15両化され,その牽引の任務をEF60に譲り降板しています。

 EF58は上越線や東北本線黒磯以南においてもそれまでのEF56,EF57と置き換わり,俊足と蒸気暖房装置を活かして客車牽引に従事しました。東北・上越系統では1970(昭和45)年から宇都宮,高崎第二,長岡区のEF58を中心に,電気暖房(EG)用のサイリスタインバータを搭載する改造工事が実施されています。

 EF58で特筆すべきは6061号機の2両で,当初からお召列車専用機と指定して発注され,60号機は東芝府中工場において1953(昭和28)年7月30日に,61号機は日立製作所水戸工場において7月15日に,それぞれ特別装備を施されて落成しました。これは我が国の機関車の長い歴史の中でも他に例を見ないことです。落成後,両機が牽引したお召列車は軽く100回を超え,正装時の輝くばかりの姿はファンを魅了しました。浜松区の60号機はその後一般運用に充当され,正面窓のHゴム支持化や側面エアフィルターのヨロイ戸化など原形を失ないましたが,東京区の61号機については前面窓が原形の大型窓のまま存置され,近年までお召し指定を受けていたことから絶大な人気があります。61号機は21世紀に入ってもなお品川のクラに現役当時と変わらない姿で動態保存され,多くのゴハチファンの心の拠りどころになっていましたが,2008年に遂に引退となり,大井御料車庫で保管されていましたが,2022年10月30日からはさいたま市の鉄道博物館で展示保存されています。

 EF58は製造両数が172両(1-31, 35-175)と多く,新製時期も1946(昭和21)年から1958(昭和33)年と長きにわたりました。箱型から流線形への改造や機能追加,更新修繕,配置機関区における気候や線区特有の環境に合わせたさまざまな改造により,一両ずつ形態が異なるといっても過言ではなく,知れば知るほど魅力が尽きません。


 2002年11月24日 EF58ページ開設
 2007年12月8日  解説ページ追加


■ 参考文献
 華麗なる特急電機 EF58 1981年 企画室ネコ

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